いぬねこトークのアイコン いぬねこトーク「ねこ育て日誌~町蔵と私~」 

その2.「子猫、とりあえず「町蔵」と命名」

ねこ育て日誌

さて、保護した子猫のその後です。

子猫にフードを与え、キャリーに入れて部屋の中央に据え(中央、ということに特に意味はありません)、戸締りして家を出、打ち合わせに向かいながら私は、とりあえず呼び名はつけなければ、と思っていました。

「とりあえず」というのは、カラスの捕食から緊急避難的に保護はしたものの、永続的に私自身が飼うつもりはないからでした。だって子猫がかわいそうでしょう。時間が不規則なフリーランスの独り者、しかも地方出張も多いのです。通いの「ヘディ猫」のように、当家以外にも複数のパトロンを抱える、“やり手”の自立した大人猫が、時々来るときに相手をする程度なら問題はありません。でも、子猫の場合、心身の成長発達のためにも、できるだけかまってやり、遊んでやったほうがいいからです。

とはいえ、一時の感情で保護して、その後投げ出すような言語道断なことをするようなつもりでは、勿論ありません。子猫の行く末にきっちり責任を持つ決意です。私より数等素敵な飼い主さんをちゃんと探し、身の立つようにしてやろうと思っていました。  そしていよいよ見つからないときには、当然、自分で飼うつもりでした。

器量よしになる気配あり

しかし、ぐじゅぐじゅではありましたが、器量よしになる気配はあるし、「私に飼われるより幸せになれる家に、こいつは必ず貰われる」と楽観的に確信していました。

これは保護した晩の様子。まだ毛並みがぱさぱさですが、なかなかいい顔ぢゃないの~、と思いました。

私は、始終子猫のことを気にしつつ、打ち合わせに臨みました。一つ打ち合わせを済ませて移動し、次なる打ち合わせの相手は、猫好きイラストレーターのO高さん。  仕事の話もそこそこに、「実は……」と子猫を保護したことをお話しすると、「じゃあ、うちに帰ると子猫がいるんですね! いいなあ」と目がハートマークになっているO高さん。

「名前はとりあえず『町蔵』でいいですかね?」と聞いてみます。この名は、猫好きパンクロッカーで作家の町田康こと町田町蔵から。彼は著書『猫にかまけて』(講談社)の中で、「猫にかまけているとうだつがあがらない」という冷厳なテーゼを提唱しており、私の子猫保護の顛末は、まさしくその説をなぞるような事象だと思ったからです(まあ、芥川賞も萩原朔太郎賞もとっている町田康自身は、猫にかまけても十分うだつはあがっていると思うのですが)。

他家の猫の名前について「いいですか」などと了解を求められても困ると思いますが、O高さんは鷹揚に承認して下さったので、とりあえず、「町蔵(仮)」と命名しました。

O高さんと別れ、家に戻る道すがら、帰ったらみきゃみきゃ鳴きまくってたら困るなと思いましたが、玄関を開けても室内はひっそりしています。大丈夫か? と荷物を投げ出してキャリーを覗き込むと、こっちを見ている大きな目。ああとりあえずは別状ないと安心し、キャリーから町蔵を取り出しました。一掴みしかない片手サイズなのが頼りないのです。

片手サイズの子猫

ご覧の通りの片手サイズ。獣医さんの推定では、生後3~4週間くらいということでした。もう離乳はしている時期。

「朝晩に」と獣医さんから指令されていた投薬を行なってからフードを与えると、バクバクと食べ、夢中のあまりフードを入れた皿をかじったりする勢い。食欲があるのは結構なことですが、こんな小さな歯が欠けないかと心配しつつ「それはやる気の方向性が違う」と、町蔵の口元を指先で押して指導します。

ごはん

町蔵の食事はペットフードメーカー「ヒルズ」のサイエンスダイエット。はじめは獣医さんからもらった特別療養食(右)。それを食べ終わってからは、同じくヒルズの市販の子猫用フード(左)を与えていました。

ひとしきり食べると落ち着いたらしいので、キャリーの中に戻してそばを離れました。すると「みゅー…」と鳴くので、戻ってキャリーを開け、指先でなでてやると鳴き止みます。そこでキャリーに戻してその場を離れると、また「みゅー」と鳴く……ということが繰り返され、自分の用事ができません。

ようやく落ち着いたのを見届けて机に向かったら、町蔵を保護する前に送りかけだったメールが、そのままになっているのに気付きました。  今日の日中の仕事の予定は、町蔵の登場で吹っ飛びました。今後、こういうことが増えるかもしれないなと先が思いやられながら、私は途中になっていたメールの続きを打ったのでした。

その晩の就寝時は、町蔵はキャリーの中で寝かせることにしました。私が眠っている間にあちこち歩き回らせるのも心配だし、寝返りを打って知らぬ間につぶしてしまったらいけないから一緒に寝ることもできないと思ったのです。キャリーは、ベッドの枕元に置きました。私が枕に頭を乗せると、中が覗き込める位置です。

キャリーの中から、町蔵は私のほうを見ています。「大丈夫、こわくない、こわくないよ」と小声で繰り返し言い聞かせるうちに、町蔵は大きく見開いていた目を次第に閉じ、やがて子猫らしく唐突に、ことりと眠ってしまいました。

ハタリと眠りに入る町蔵

今まで活発に動いていたのに、突然ハタリと眠りに入るという、人間にも猫にも通じる、幼いもの特有の眠り方。見る見るうちに、例えばこんなふうに4カットのうちに、眠りに就いてしまいます。

ふっとおとなしくなったと思ったら、目がとろんとしてきて、頭が下がり…、そしてもう眠っています。

ちょっと眠たくなってきて
横になっったら
ハタリと眠りに落ちます

それを見届けて私もいつの間にか眠りに落ち、町蔵保護初日はこうして過ぎて行ったのでした。
次回につづく)

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蔦谷K

蔦谷K
http://nekokematsuri.blog.shinobi.jp/

生まれたときから身近に居た「猫」をテーマとして、エッセイ、豆本、ハンドクラフト、写真などを製作・発表。
猫をブラッシングして集めた毛が材料のクラフト「猫毛フェルト」を考案し、作り方を紹介した『猫毛フェルトの本』を2009年に出版。同書は好評を博し、台湾、アメリカでも翻訳出版される。その後「猫毛フェルター」として、各地で作品展『猫毛祭り』やワークショップ、猫毛フェルト指人形劇公演などを延べ50回以上開催。
著書に『猫毛愛』(幻冬舎)『猫毛フェルトの本』『もっと猫毛フェルトの本』(以上飛鳥新社)『猫毛フェルト12カ月』(三才ブックス)など。東京都出身。


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