いぬねこトークのアイコン いぬねこトーク「出会いは突然に!子猫を保護した猫を育てる」 

その1.「ぐじゅぐじゅ子猫、資材置き場で保護しました!」

ねこ育て日誌

当方、「猫毛フェルター」として活動する蔦谷K(つたや けー)と申します。以前本サイト内の「ねこ経済新聞出張版」や、「いぬねこニュース」に掲載していただきましたが、改めて自己紹介致します。

私は、猫をブラッシングした毛を材料に、羊毛フェルトと同じような技法で作品を作るクラフト「猫毛フェルト」を行ない、『猫毛フェルトの本』など作り方の本を出版しています。もとはライターで、猫についてのエッセイ『猫毛愛』というのも出しております。

そんなわけですから、ご拝察の通りの「猫たわけ」。「猫たわけ」というのは、文字通り、猫についての「たわけ者」です。
猫たわけの私は、街を歩けば塀の上に香箱を組む猫の姿を探し、家では猫の柔らかな毛並みに顔をうずめてヨダレを垂らしそうになり、油断すると四六時中、猫のことばかり考えてしまうので、そうならないように、常に自らを戒めながら過ごしています。

さて、そんな私がある年の夏、戒めを破って文字通り四六時中、猫にかまけて過ごしました。昼も夜も子猫に振り回された熱い日々、その模様を書き記したのが、この「ねこ育て日誌 町蔵と私」です。(※)お読みいただいても、行儀の良い猫にするしつけなどには、ほぼご参考になりません。多少は、ああ、そうするのか、と猫の世話のご参考にはなるかもしれませんが、主には、私のアタフタ、デレデレぶりを、「コイツしょうがないなあ」と呆れ、笑いつつ、お楽しみいただく読み物として、お付き合いいただければ幸いです。
(※本作品は、サイト「語ろ具」に過去掲載された「子猫の町蔵日記」に加筆訂正したものです)

さて、それは某年7月末、ある火曜日のことでした。午前中、仕事に勤しむ私の耳に、フト、猫の声が聞こえてきました。なじみの「ヘディ猫」かと玄関に回りましたが、彼女の姿はありません。

ヘディ猫

さて、この「日誌」の登場猫をご紹介していきます。主人公の子猫の前に、まずは「ヘディ猫」。今は完全室内飼育の当家の飼い猫ですが、当時は、ふらりと当家にやってきては、またどこかへ出ていく「通い」の立場でした。

常に身ぎれいで、食べる物にも事欠いて居ない様子から、訪れる家は複数あるようでした。いろいろなものに額を押し付けるのが好きで、ヘディングしているように見えるところから「ヘディング猫」と命名。つづめて、「ヘディ猫」になりました。他の家では他の名前で呼ばれていたかも。

ヘディ猫

そんなヘディ猫が本の上に優雅に佇みます。引き出しの上面は床から95センチほど。その隣に置いた椅子の上に本を置いていたら、いつのまにかそれを越す高さに。積み上げた本を崩さずに軽く飛び乗り、平然としているのは、バランス感覚、身体能力の優れた猫ならでは。さすがです~。

「はて?声はすれども姿は見えず」と思っていると、再び「にぁ」という声が聞こえてきました。どうやらベランダのほうからで、何だかヘディ猫の声とは違うようです。

網戸を開けてベランダに出ると、今度は猫の声でなく、人の話し声が聞こえてきました。左手の道路の向こう、当家の筋向いにある某社の作業場のほうからです。

「あっちの資材置き場にいるんだよ」

「母親はいないの?」

その作業場の隣は、塀を隔てて他社の資材置き場になっています。そこに野良の子猫が入り込んで鳴いているのを作業場の人たちが見つけ、おしゃべりしているようでした。多少気にはかかりましたが、私の出る幕ではないと思い、そのまま引っ込んで仕事を続け、そのうちにすっかり忘れていました。

夏のベランダ

夏でベランダ側の窓は開け放していて、見えるのはこんな風景。大屋さんの広い庭。木が多いのでスズメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、オナガなど何種類もの鳥が来ます。画面の左の先が道路で、その向うに話題の資材置き場があります。

そして午後2時過ぎ、「このメールを打ち終わったら昼飯を食べよう」と考えていた私の耳に、また「にぁ」という声が聞こえてきました。と、そのすぐ後にカラスの鳴き声も聞こえ、それを耳にした瞬間、私は立ち上がって外に出、資材置き場に向かっていました。後から理屈を付ければ「私の出る幕でもないけど、カラスなんかもっと出る幕じゃない。取られるもんか!」という気持ちだったでしょうが、実際は何も考えず反射的に行動していたのです。

無人の資材置き場なので、断りを言うべき相手もなく、私は口の中で「ちょっと入りますよ」とつぶやきつつ遠慮がちに入り、子猫が鳴いていたと思われるあたりを見ました。

しかし子猫の姿はなく、鳴き声も聞こえません。いきなり人が来たので警戒して隠れた?どうやって探す?そう思ったとき、ごく近くで、一際大きな「にぁ!」という声が。すぐ右手、屋根つきの粗い金網の囲い、その中に、見つけにくい保護色のきじとら子猫が座っていたのでした。私は金網の隙間から手をつっこみ、子猫の首筋をつまんで持ち上げました。頭上でカラスがカアと鳴き、私は「もうこわくないよー」と言いながら子猫を確保して家に取って返しました。

子猫は掌にすっぽり収まる小ささで、目やにで目をシバシバさせ、鼻の周りは鼻水だらけだったので、専門家のケアが必要と思い、その足で獣医さんに向かいました。「M動物病院」のM田先生は、子猫を見て「わあ、ぐじゅぐじゅだねえ、キミ」と一言。「もう歯も生えてるのに280グラムしかないなあ、栄養不良だねえ」と、ペースト状のフードをスポイトで与え、子猫は夢中で食べ始めました。私は、まずは食欲はある、とほっとし、M田先生も「大丈夫、キミの人生は始まったばかりだよ」と子猫に語りかけます。このときの診療で、ノミとダニが駆除され、猫カゼのための抗生物質、目薬、特別療養食缶詰が処方されました。

保護した当日

これが保護した子猫。保護直後は慌てていたので、携帯電話で撮ったこの画像しか残っていません。私の手と比べると小ささがおわかりいただけましょうか。

それにしても、こんな小さくてこわれそうな猫、当家のあちこちに積み上げられた本(前出、ヘディ猫の画像を見ていただくと、おわかりの通りです……)の間に迷い込み、体の上に本が落ちてきたら骨が折れてしまうかもしれません。

そんなわけで一人(一匹?)で部屋においておくのは心配で、私が外出するときはキャリーに入れておこうと思い、獣医さんからペットショップに回り、キャリーとペットシーツ、そして子猫用フードも購入。家に戻って、小さな皿に療養食を入れたらバクバクと食べ、キャリーの中に入らせたら、疲れていたのか子猫はすぐに眠りました。

それを見届けた私は素早く支度をして家を出、打ち合わせに向かいました。そして駅への道を急ぎながら、理性を取り戻し、「このクソ忙しいのにあああああ!どうしてこんなことしちまったんだろう…」と、心の中で叫びました。
なぜなら私は一人暮らしで仕事はフリーランス。否応なく留守がちで、こんな幼い子猫を保護して世話できるの、自分? と自問しつつ、前途が思いやられていたのでした……。

(次回につづく)

ぐじゅぐじゅ

保護当日の子猫。まだ目がぐじゅぐじゅで情けない表情。本猫も鬱陶しそうだし、見ているこちらも「大丈夫か…?」と心配になります。

しっかりした感じに

目やにをぬぐったら表情もにわかにスッキリ。数日後には体力も回復し、安心して「でへへ~、かわいいなあ」と見ていられる、しっかりした感じになりました。

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蔦谷K

蔦谷K
http://nekokematsuri.blog.shinobi.jp/

生まれたときから身近に居た「猫」をテーマとして、エッセイ、豆本、ハンドクラフト、写真などを製作・発表。
猫をブラッシングして集めた毛が材料のクラフト「猫毛フェルト」を考案し、作り方を紹介した『猫毛フェルトの本』を2009年に出版。同書は好評を博し、台湾、アメリカでも翻訳出版される。その後「猫毛フェルター」として、各地で作品展『猫毛祭り』やワークショップ、猫毛フェルト指人形劇公演などを延べ50回以上開催。
著書に『猫毛愛』(幻冬舎)『猫毛フェルトの本』『もっと猫毛フェルトの本』(以上飛鳥新社)『猫毛フェルト12カ月』(三才ブックス)など。東京都出身。


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