肉球 いぬねこ先生通信「腎臓(後編)」

動物にとっても重要な臓器を学ぶ~「腎臓」編(後編)

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獣医師岩崎脩先生

こんにちは。いつもコラムを読んでいただきありがとうございます。

前回は五臓六腑シリーズの『腎臓』前編として腎臓がどのような働きをしているかについてお話しました。今回は猫の慢性腎臓病についてもう少し詳しく解説します。

多飲多尿に注意

腎臓病の原因は残念ながらわかっていないので、早期発見が大切です。では、猫ちゃんが腎臓病にかかるとまずどのような症状がでるのでしょうか?

健康な猫ちゃんは缶ジュースの量の血液をろ過して(ろ過能といいます)ポリバケツの量の原尿を作り、それから必要な水分などを再吸収して尿を濃縮しています(濃縮能といいます)。猫ちゃんに多い腎臓病(間質性腎炎)では最初に濃縮能の方に問題が生じます。尿の濃縮能が低下するということは、濃い尿が作れなくなる、つまり薄いおしっこが大量に出るということです。これは猫ちゃんの腎臓病を早期に発見する非常に重要なポイントです。

多尿になると当然猫ちゃんは排尿回数が増えます。ペットシーツやトイレ砂の使用量が増えたり、おもらしなどをすることがあればそれは多尿のサインかもしれません。大量の尿が出るようになると脱水を起こしやすくなるため水も多く飲むようになり、この状態を多飲多尿と言います。猫ちゃんが腎臓病にかかるとまず最初に多飲多尿という症状が見られるということを是非覚えておいてください。

生活環境の見直しと食事療法

多飲多尿の症状がある場合はもちろんですが、年に少なくとも1~2回は尿検査や血液検査などの健康診断を受けましょう。尿検査では多尿により薄いおしっこであるか、膀胱炎がないか、尿中に蛋白質が多く漏れ出ていないかなどをチェックします。濃縮能の次に徐々にろ過能が低下してくると老廃物のろ過がうまくいかなくなるので、クレアチニン(Cre)や尿素窒素(BUN)といった血液中の老廃物を評価する項目が上昇してきます。腎臓病を悪化させる栄養素であるリン(P)が高くないか、造血ホルモン低下による貧血がないかも血液検査で調べてもらってください。

ここで注意しなければならないのが、腎臓は予備能力が高いために腎臓機能の75%以上が障害されないと血液検査の異常値が見つからず、一度失った腎機能は回復しないということです。75%というと2つある腎臓のうちひとつはダメになってしまっていてもう片方も半分がダメになってしまっている状況です。裏返して言えば腎臓の数値が基準値内であっても決して「腎臓は正常です。」と言うことはできないのです。

慢性腎臓病の治療の中心は生活環境の見直しと食事療法です。脱水から猫ちゃんを守るために水をいれる容器を大きくする、複数箇所に水を用意するなどして水分摂取量を増やすように心がけてあげましょう。飲むだけでは十分に水分を摂れずに脱水してしまう場合は点滴によって水分を補ってあげます。高血圧や蛋白尿が認められるような腎臓病では病気が加速することがわかっているので内服薬が必要になります。

食事療法は慢性腎臓病の治療の大黒柱です。腎臓病になってしまった猫ちゃんにリン(P)を制限した腎臓病用の療法食を食べてもらうと、そうしなかった猫ちゃんと比べてなんと3倍も長生きできることが証明されています(ワンちゃんでも同様のデータがあります)。猫ちゃんは食に対するこだわりが強く、そのためドライフード、缶詰、パウチタイプなど各メーカーから様々なラインナップがあります。継続できる療法食を選んであげましょう。

療法食

慢性腎臓病は猫ちゃんが発症する病気の中で最も多く、死因の上位にも挙げられる重大な病気。にも関わらず、はっきりとした原因がわかっておらず、悪化するまで目立った症状や血液検査の異常も見つかりません。充分な飲水ができる快適な生活環境、多飲多尿という症状の早期発見、ライフステージや病気にあった食事、健康維持のための定期的な健康診断など、猫ちゃんがいつまでも元気でいられるように私たちはサポートしてあげましょう。


獣医師岩崎脩先生

協力:
昭島動物病院(東京都昭島市)
獣医師 岩崎 脩 先生
http://www.aaho.jp/

動物と飼い主様のより良い信頼関係の構築に貢献できるような情報を提供していきたいと思います。


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